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PROLOGUE (随時更新)

20 Jan. 2024

九鬼周造「いき」の構造

九鬼周造の「いきの構造」は、1930年に出版された日本の美学に関する著書です。この本は、日本の独特な美意識である「いき」を、哲学的な観点から分析・解明したものです。
「いき」とは、一般的に「粋」と表記されます。これは、江戸時代の庶民文化の中で生まれた美意識であり、現代でもなお日本人の美意識に大きな影響を与え続けています。九鬼は、「いき」の内包的構造では、「いき」を形成しているのは「媚態」「意気」「諦め」の三つの性質で、「媚態」が基本となり「意気地」と「諦め」がその性格づけをして、「いき」を形成していると述べています。
・「媚態」 一元的の自己が自己に対して異性を措定し、自己と異性との間に可能的関係を構成する二元的態度である
・「意気」すなわち「意気地」である。「いき」は媚態ではありながらもなお異性に対して一種の反抗を示す強味をもった意識である
・「諦め」 運命に対する知見に基づいて執着を離脱した無関心である
それを踏まえて、意識現象としての「いき」を「垢抜けして(諦)、張りのある(意気地)、色っぽさ(媚態)」と定義しています。
「いき」の外包的構造で、「いき」に関係する言葉「上品」、「派手」、「渋味」を挙げ、それらの「いき」との関係を明示させることで、「いき」の意味現象をよりはっきりさせることを試みています。
江戸時代の浮世絵については、「姿勢を軽く崩すこと」、「湯上がりの姿」、「ほっそりとしていて柳腰」について「いき」であると述べています。さらに、江戸の遊女や芸者の例を挙げながら薄化粧についてや、「いき」の非現実性、理想性について肉の落ちた細さについても言及。意識しての「いき」は、「意気地」(理想性によるもの)「諦め」(非現実性によるもの)で完成される「媚態」であると提唱し、自然的表現は、一元的なものである平衡を理想性や非現実性を意識させる方法で崩し、二元性を暗示する媚態が表現されていると示しています。
 

「いき」の芸術的表現では、模様、建築、音楽の自由美術に着目しています。
「模様は「いき」の表現と重大な関係をもっている」とし、特に永遠に交わらない平行線は二元性を純粋に視覚として表すもので、縦縞こそが「いき」であると解説。さらに縦縞は、小雨や柳の枝を想起させる軽やかさがあり、対象をほっそりと見せる効果もある。こうした二元性に加えて、「軽巧精粋の味」が縦縞をより「いき」にさせていると述べています。
また、色彩については灰色、褐色、青色の三系統を挙げ、「いき」のうちの非現実的理想性を表現している。すなわち、二元性をあらわす形状と、非現実的理想性をあらわす色が合わさり、「いき」は模様に表現されるとまとめています。

「運命によって「諦め」を得た「媚態」が「意気地」の自由に生きるのが「いき」である」

「いき」は、日本人の美意識の根底に流れる、重要な概念です。この概念を理解することで、日本の芸術や文化をより深く理解することができるでしょう。

追記
​九鬼周造の著書においては、「偶然性の問題」「人間と実存」「哲学の私見」などが代表作。とても興味深いうえ、私自身も屋号に「いき」をなぞっており又、ファンの一人です。

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九鬼周造
1888(明治21)年、男爵九鬼隆一の四男として東京都芝に生まれる。第一高等学校をへて、1909年東京帝国大学文科大学哲学科に入学し、ケーベル博士に師事する。1921年に東京帝国大学大学院を退学後、足掛け八年に及ぶヨーロッパ留学に出発する。1929年に帰国後、京都帝国大学で教鞭をとり、西洋哲学の普及に努める。1941(昭和16)年、53年の短い生涯を京都で閉じた。

12 Jul. 2022

ぼくがジョブズに教えたこと「才能が集まる会社をつくる51条」

ノーラン・ブッシュネル  Nolan Bushnell

ノーラン・ブッシュネルは伝説のゲーム会社アタリの創業者だ。1972年に会社を立ち上げ、またたくまにアーケードゲーム「ポン」を当てた。続いて「ブレイクアウト」(ブロックくずし)などのヒットを次々に飛ばし、そのうち“ビデオゲームの父”と呼ばれた。
スティーブ・ジョブズは、そのブッシュネルのアタリ社40人目の社員だった。ブッシュネルは面接で、ジョブズが熱情と才能はもっていることをすぐに見抜いたのだが、ジョブズは「泊まりこみができなければこの会社に入らない」と言いはった。
すでにアタリ社は機械警備によるシステムができていて、夜中に机で寝たり、社内をウロウロすると警報器が鳴りっぱなしになる。ジョブスは「仮眠ができないような会社には来たくない」と譲らない。やむなくブッシュネルは社内規則を変えて、ジョブズを採用した。
そのジョブズがアップルを起業してしばらくたった1980年、パリの豪邸にいたブッシュネルのところにお伺いをたててきた。「何が次の山となるのか、それはどうすればわかるのか」「他人の一歩先を行くにはどうしたらいいのか」といった質問だった。ブッシュネルは一晩中、さまざまなヒントを授けた。
まずは「未来の自分を想像しなさい」と言った。ジョブズは豪邸のCEOではなく、ジーンズをはいた技術経営者を思い描いた。「いつかコンピュータにさせたいことがあっても、いまは何ができていないかを考えろ」とも教えた。なるほど、LISAには「できていないこと」のほうが多かった。その後もジョブズは驚くほど、ブッシュネルに相談をもちかけてきた。
ブッシュネルはジョブズに数々のヒントを授けた。創造的な会社をつくりあげるための51条の秘訣を。
  1. 職場を「広告」にしてしまいなさい。自分たちの仕事に自信があって、それを外にうまく伝えられていないなら、職場そのものを広告すればいい。
  2. 規則はなるべく少ないほうがいい。多くなったら、できるだけ柔軟なものにしておきなさい。
  3. 求人広告こそが勝負だ。それがクリエイティブでなかったら、誰がクリエイティブになってくれるのか。
  4. 採用基準は「情熱」である。
  5. 資格も経歴もカンケーない。資格社会を真価社会に変えるべきだ。
  6. 多趣味の持ち主や手続きが面倒な趣味の持ち主が、やがてクリエイティブになる。
  7. できる社員にはそれなりの人脈がある。その人脈を使うといい。それが人材登用のビジネスというものだ。
  8. とんがった会社じゃなければおもしろくない。とんがった社員を入れなさい。ただしリスクをとる気がなければダメだ。
  9. 横柄な奴や鼻持ちならない者たちからは、能力だけを引き出せばいい。そしてその能力を管理者が発揮すべきなのだ。
  10. 創造性と狂気は紙一重である。
  11. いじめられっ子は才能を隠している。本当の自分を喋らせることだ。喋っても大丈夫だと思ってもらうことだ。
  12. ジョブズは講演がうまかった。うまい講演者の近くに行こうとする者たちに注目するといい。かれらはたいてい雇い甲斐がある連中なのだ。​
  13. 面接ではまず愛読書を尋ねなさい。どんな本を読んだかではなく、どれくらい読んできたかだ。
  14. 採用候補者は社外に連れ出してみなければ、その可能性がわからない。
  15. 逸材はどこにでもいる。レジや洋品店やウェイトレスに目を配りなさい。
  16. ツイッターは見出しが並んでいる才能一覧表だ。これを使ってどんどんリクルートすることだ。
  17. ときどきはおもしろい会やコミュニティに顔を出すべきだ。ブッシュネルはネバダの砂漠で開かれるバーニングマン、マインドシェアの会、カンザスの農業関係者が集まるプレーリーフェスティバル、非会議のBIL、アムステルダムのピクニックフェスティバルなどに定期的に顔を出している。
  18. 口先だけがうまい連中には注意。かれらが何を説明しているかではなく、どう判断しているかだけを見るのがいい。
  19. おもしろい社員をつくりたいのなら、おもしろい質問ができなければいけない。答えには正解がなくていい。かれらがどのような回路で答えようとしたかを観察することだ。
  20. もしもめずらしい才能が見つかったら、その才能にぴったりの役職をつくるべきである。
  21. ときどきはパーティなどで息抜きをさせなさい。​
  22. 組織はフラットがいい。コンプライアンスなど何の役にも立たない。「統制された無秩序」をつくるのが経営者の役割だ。
  23. ときに「いたずら」が名案を生む。
  24. 会社は分割すべきではない。分室をつくりなさい。ロッキードのスカンクワークス、グーグルのグーグルXなどがいい例だ。
  25. 手柄は独り占めさせないこと。どんな成功もチームを褒めたい。アップルストアの店員は安い賃金だが、3ヵ月で75万ドルを売り上げる。
  26. どんな社員たちも3日間ほど旅先に連れていけば、取り繕えなくなっていく。そこから新たなチームづくりが始まる。隔離と繁栄とは隣りあっている。
  27. 最良のアイディアもいいが、最悪のアイディアもいい。
  28. 失敗から学ぶことが大きい。失敗をこわがる組織は新しい着想を膨らませられない。ヘンリー・フォードは最初の会社2つを失敗し、アップルは「リサ」の失敗があったからこそ、あんなに成長できた。
  29. リスクこそ資源だ。音楽のオンラインサービスのパンドラ社は50人全員が2年にわたって給料の遅配に耐え、ダイソン社は新しい掃除機のプロトタイプ5,000種類に失敗した。ただしリスクにも生態系がある。心臓や肝臓のリスクはヤバい。これを理解しなければいけない。
  30. 1つのことに賭けてはいけない。幾つもの試みを併走させなさい。そのうちの1つが失敗するなら、万々歳なのだ。
  31. クリエイティブな者にはメンターが必要である。メンターは指導力・助言力・教育力・理解力・支援力をもっている。そういうメンターなら社外にいてもいい。ジョブズのメンターはブッシュネルで、ブッシュネルのメンターはボブ・ノイス(フェアチャイルド・セミコンダクターとインテルの共同創業者)だった。ボブはこう教えた。「他人の仕事がたやすいように見えるのは、君の知識が足りなすぎるからだ」。​
  32. 管理者はクリエイティブな人材を子供扱いする。大人として扱いたい。
  33. 本当のクリエイティブには分析や解析が生きている。制作者がそのようになるためには、オーダーに指揮系統をもたせるべきなのである。
  34. 仕事のスペースを創造的にしなさい。ブッシュネルが起業した18番目の会社「ユーウィンク」はロスの建物を仕事場に選んだのだが、その建物はあまりに小割りになっていて、改装する資金もなかった。そこで壁のすべてに黒板塗料を塗り、3メートルおきにチョーク箱を置いた。すばらしい連中が活躍することになった。
  35. プロジェクトが低迷するのは、ブレスト(ブレイン・ストーミング)とプレゼン(プレゼンテーション)ばかりで、仮想のデモンストレーション(最終製品発表)がないからだ。実はジョブズはこれがうまかった。
  36. クリエイティブな連中には、いつも大量の仕事を投下しつづけることである。
  37. 仕事がうまくいくには、先行の企画物や制作物を予告しておくことだ。人は「次から次へ」という連鎖のなかでアイディアが湧く。
  38. 期待している社員とは話しこめなくてはならない。
  39. ときどき会議のテーブルにおもちゃや変なものを置いておきなさい。
  40. サルトルは「地獄とは“ほかの連中”のことだ」と言った。社内で“ほかの連中”はいないだろうか。それに気がつかないままにいると、会社に地獄ができていることになる。
  41. すぐに文句を言う奴、反論がくどい奴には、その言い分を文書で提出させるのがよろしい。​
  42. アイディアに詰まったらブレストはやめること。散歩を促す、身だしなみを整える、髭をそる、テレビを見る。転換が必要なのだ。
  43. アイディアに限界があるのは、コストに見合わないもの、高価なものを発想できないからである。
  44. フランク・ザッパは自分の創造力に枯渇を感じたとき、生活のリズムの節目を変えた。起床時間を変え、前後を入れ替え、朝食と夕食をひっくりかえした。ブッシュネルはふだん使わない「新しい言葉」を使うことを勧める。
  45. あまりに調子がよくないなら、自分で次のことを決めないで、隣のスタッフに決めてもらうといい。ブッシュネルはそういうときには20面体のサイコロを振った。
  46. 組織の成長を妨げる最大の要因は「社内手続き」が気になってしまうとき、成長が劣化するのは「社内手続き」をしているときである。
  47. スピードを上げたいときは、ウィキペディアを見るスピードも上げてみることだ。
  48. 会計や財務は専門でないのだから、教えてもらえばいい。
  49. ときどきはトップが「即席の休日」をつくってあげる。そのほうが社員に大局観が生まれやすい。すべての創造力の鈍磨は大きい問題と小さい問題の区別がつかなくなることなのだ。
  50. どうしてもぐずぐずしている制作部門の奴は、営業をさせるしかない。
以上、すべてがうまくいかなくても、社員には必ず仮眠をとらせなさい。
 
​これがブッシュネルがジョブズに教えたことだった。このうちジョブズが何を守ったのか、それでどんな成果を上げたのか、何に腹をたてたのか。けれども、会社と人材と仕事には、つねにこうした好き勝手な伝説が必要なのである。平均的な合理主義では「世界」はつくれない。

飛鳥新社 2014

Nolan Bushnell &

Gene Stone
Finding the Next Steve Jobs: How to Find, Keep and Nurture Creative Talent 2013
[訳]井口耕二
編集:富川直泰
装幀:水戸部功

ノーラン・ブッシュネル(Nolan Bushnell)
1943年生まれ。娯楽産業史上「ビデオゲームの父」として世界的に讃えられる起業家・経営者。1972年、ゲーム会社「アタリ」を設立。同年発表のアーケードゲーム「ポン」は業界初の大ヒットを記録し、現在にいたるゲーム産業発展の基盤となった。無名時代のスティーブ・ジョブズの才覚を見抜き、アタリ40人目の社員として雇い入れ、才能を開花させたことでも知られる。アップル設立時にも支援をおこない、ジョブズから生涯、師と慕われた。屈指の「連続起業家」としても著名で、他に立ち上げたビジネスは北米の人気レストランチェーン「チャッキーチーズ」、テクノロジー・インキュベーターの先駆けである「キャタリストテクノロジーズ」など20社以上。近年も、脳科学に基づく教育ベンチャー「ブレインラッシュ」を立ち上げるなど、第一線で活躍中。

19 Feb. 2022

本質を察知し、可視化する
 

「見て、覚えろ」
入社間もないデザイン会社で、先輩によく言われた言葉でした。
「教えない」のではなく、教わることは「その人」の感性であって
たとえ、教わったとしても「その人」の感性を身につけただけで、
決して「その人」を超えることはできないのです。
言葉では伝えられない「何か」があり、身体で覚え身に付けることが一つの感性なのです。
時間によって培われたスキルよりも、一瞬の閃きが「個の感性」として存在していきます。
 
2000年代に入り、すっかりアナログ的な作業が非合理とされ、淘汰されてきました。
デザイン構築のプロセスも、XとY軸の数値によって構成されるようになり、
着地点がほぼ同列のデザインとなりつつあります。
それはデザインが生活に根差すことで、いっそう構築・設計<デザインとなり、
概念そのものを大きく変化させてきているのです。
 
 
 
 

ベーシックなデザイン概念 01
 

物のかたちの基本的要素である点、線、面そしてボリューム(容積)。
すべての物のかたちを最初に創る点から出発し、最初は建築デザインなどでは概念的な要素ですが、やがて目に見える要素になっていくプロセスにおいて各要素は描かれていきます。
点が動く、すると線が現れます。
その線を一つの面が得られるように移動すると二次元の要素が得られます。
平面上ではなく空間へそれを移しながら、面と面とをぶつけ合わすと物体(三次元)が立ち上がっていきます。
​運動エネルギーの集約が点を動かし、線となり、線を面に、さらに面を空間としての次元へ導きます。

10 Jan. 2022

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